バレンボイムのサン=サーンス/歌劇「サムソンとデリラ」バッカナール

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サン=サーンス/歌劇「サムソンとデリラ」~ バッカナール
ダニエル・バレンボイム指揮 パリ管弦楽団
Recording:1978.7.22 Roemisches Theater, Orange
Recording Producer: Günther Breest (DG)
Recording Director: Wolfgang Stengel
Recording Engineer: Klaus Schaibe
Length: 7:11 (Stereo)
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サン=サーンスは生涯に13曲のオペラを作曲したが、その中でも最高傑作とされる作品が旧約聖書・士師記を題材にした《サムソンとデリラ》で、ヘブライの英雄サムソンとその地を支配するペリシテの美女デリラとの愛と憎悪の物語。

sv0136c.jpg舞台は紀元前12世紀中葉、パレスチナのガザの町。イスラエルの民が非セム系のペリシテ人に支配されて苦しめられていた頃、神から怪力を授かったサムソンが誕生した。

サムソンは多くのペリシテ人を殺戮するが、ペリシテ人のデリラという女性を愛するようになり、誘惑に負けてその怪力の源が髪の毛にある秘密を明かしてしまう。


デリラの密告でサムソンは髪を切り落とされて力を失い、両目を抉られてペリシテ人の囚われの身となる。ぺリシテ人たちがそれを祝う宴(第3幕第2場)で演奏される舞曲が〈バッカナール〉だ。バッカナールとは、古代ギリシアの“酒神バッカス”を讃える祭りのことで、エキゾチックな音楽によって官能的な舞踊が繰り広げられてゆく。

sv0136a.jpgここでは当時30代半ばの俊英バレンボイムが首席指揮者の任にあったパリ管弦楽団を変幻自在に操り、多彩な音色と歯切れの良いリズム感覚によって熱狂的な酒宴を鮮やかに演出する。

ことに色彩感のある木管楽器のハーモニーがオリエンタルな妖しさを存分にまき散らしているのが聴きもので、乱舞の頂点に達するクライマックスの高揚感は冠絶している。

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「バレンボイムの演奏は、響きの豊かさや音色的な多彩さ、そして作品それぞれの様式的な妥当性などが、魅力の大きな源泉となっているが、それらは、ここでも例外なく発揮されており、たとえば、かなり性格の異なるサン=サーンスの3つの作品での共通性と対比にも、それは明らかにされているといえよう。」 藤田由之氏による月評より~『レコード芸術』通巻第373号、音楽之友社、1981年)



アレグロ・モデラート
sv0136d.jpgダゴンの神殿の内陣の場。ペリシテ人たちによる勝利の宴がはじまろうとしている。オーボエがヘブライの旋律によるレチタティーヴォをホルンの和音にのって滑らかに奏でると、第1主題が木管楽器にのってリズミカルに演奏される。

ピッコロ、フルートといった木管楽器は名手たちの名に恥じぬ素晴らしい音色が聴きものだ。〈練習番号A〉でティンパニとカスタネットが歯切れよくリズムを刻み出す。弦楽器のスタッカートの切れ味も抜群! 
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sv0136e.jpgここに管楽器が加わるとオーケストラに厚味と色彩感が増し、グラモフォンならではの解像度の高い録音が洗練されたオーケストラの繊細なニュアンスをもあますところなく捉えている。

名技師と謳われたクラウス・シャイベの実力をいかんなく発揮した名録音といえる。
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〈練習番号B〉からレッジェーラメンテのティンパニの打つリズム《スッタカタッタ・タカタッタッタ》にのって、オーボエ、コール・アングレ、ハープがオリエンタル風の第2主題を歌い出す。妖しげな雰囲気を湛えた名旋律をバレンボイムが艶めいたふくよかさを加えて異国情緒ゆたかに料理するのが聴きどころ。木管楽器の透明な響きと装飾音の美しさがムードを大きく高め、色彩豊かな音場を心ゆくまで堪能させてくれる。
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ドッピオ・ピウ・レント(倍の遅さで)
sv0136f.jpg中間部で情緒豊かな旋律がヴァイオリンとヴィオラによってゆったりと奏される。ハープのアルペジオの合いの手が雰囲気をたっぷりと盛り上げ、弦楽器が妖艶に揺れて踊る音楽が大きく高揚。弦楽器の蠱惑的な響きや、木管セクションの織りなす色鮮やかな音色をお聴きあれ!

かゆいところに手が届くバレンボイムの指揮ぶりも巧妙で、聴き手の感性をくすぐる歌わせ上手な音楽運びが心憎く、難癖のあるフランスのオーケストラをものの見事にコントロールしている。
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テンポ・プリモ(もとの速さで)
sv0136g.jpgリズム打ちから始まる再現部は、歯切れの良い弦楽器のスピッカートのリズムにティンパニ、シンバル、太鼓、カスタネットが加わって鮮やかにクレッシェンドしていくのが鳥肌がモノ。

軽快な第1主題が弾みをつけて生き生きと再現されると、いよいよ興奮のピウ・アニマートへ一気呵成に雪崩れ込んでゆく。
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ディ・ピウ・イン・ピウ・アニマート(快活により快活に)
sv0136h.jpg巧みなバチさばきで音楽を主導するティンパニのリズムにのって、第2主題の艶めかしい音楽がユニゾンで熱狂的に爆発!〈練習番号G〉。

ふっくらと厚味のある音楽は次第に熱気を帯び、それが目の前に迫ってくる生の雰囲気がスピーカーから直に伝わってくるのが驚きだ。狂乱とも言うべきティンパニの超絶的な暴れぶりに興奮して思わずCDを指揮したい衝動にかられてしまうのは筆者だけではないだろう。
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酒宴が頂点に達すると、めまぐるしいテンポでペリシテの美女たちが半狂乱で踊る場面が思わず目に浮かんでくる。音楽はこれでもかと激しく熱狂し、まるでサムソンが乗り移ったかのようにバレンボイムが大暴れ。

sv0136i.jpg燦然と輝くパリ管の金管が吹き放たれると、ヘブライの旋律を高らかに歌い上げ、激しく加速をかけて興奮のうちに官能の舞いが幕を閉じる。

踊りが終わると神殿の中央に引きずり出されるサムソン。「復讐のため、しばし神のお力をわれにお貸しくだされ!」と祈ると怪力は蘇り、ダゴン神殿を支える2本の石柱は真っ二つに裂け、ペリシテ人もサムソンも神殿もろとも下敷きに・・・
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その後アッシリアの征服によって滅亡したペリシテの王国と民の消息は定かではなく、現在のパレスチナとも推定されている。

sv0136j.jpgイスラエル国籍のユダヤ人指揮者バレンボイムが、ラマラ(パレスチナ自治区)の地でパレスチナ人との混成オーケストラを組織したことに因縁めいたものを感じてならないが、この曲にうってつけの役者たるバレンボイムが手兵のパリ管弦楽団の色彩感を巧みに織り込み、ダイナミックに料理した必聴の1枚だ。
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[ 2019/07/30 ] 音楽 サン=サーンス | TB(-) | CM(-)