Musikfreund−名盤への招待

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ワレリー・ゲルギエフ指揮
ロンドン交響楽団
2008年11月28日19時開演、京都コンサートホール

Sergei Rachmaninov: Piano Concerto No.3 in D minor op.30
Frederic Chopin: Mazuruka op.17-4
Sergei Prokofiev: Ballet 'Romeo and Juliet' suite 1,Suite.2 op.64 excerpts
Sergei Prokofiev: L'amour des trois oranges - Marche

Valery Gergiev, Principal Conductor, Alexei Volodin (Piano)
London Symphony Orchestra
2008.11.28 19:00 Kyoto Concert Hall


演奏★★★★★ 音響★★★★      [評価が2点、が1点の10点満点]


お気に入りのCDや海外のライブ録音を気ままに紹介する Musikfreund(ムジークフロイント)。本日は、ワレリー・ゲルギエフ指揮、ロンドン交響楽団の来日公演から京都コンサートホールでの演奏を聴く。


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ゲルギエフが2004年より首席指揮者をつとめるロンドン交響楽団をひきいての今回の来日公演は、プロコフィエフ・ツィクルスという意欲的なプログラムで12回のコンサートが行われる。今夜は前日の札幌に続く第2夜。すでにロンドンとエジンバラにおいても交響曲全曲演奏会を行っているという。

筆者がゲルギエフを生で聴くのはロッテルダムフィル、マリインスキー劇場管弦楽団との来日公演につづいて3回目。ロンドン交響楽団を聴くのは1988年(ブルゴス)、1996年(ミョンフン)に続いて3回目だ。ロンドン交響楽団(以下LSO)は英国を代表するオーケスラであるが、ウィーンフィルやコンセルトヘボウのような個性的な音色を持つ楽団ではない。英国のオーケストラの特徴であるノーブルな味わいの弦楽器が魅力といえるかもしれないが、ロンドンフィルやフィルハーモニア管のビロードのような音色に比べればいささか聴き劣りし、LSOの魅力は金管にあるという人もいる。

オーケストラの配置は左からファースト・ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、セカンド・ヴァイオリンとならび、コントラバスは左手奧に配置する。同じヴァイオリンの対向配置でもチェロ・コントラバスとヴィオラが入れ替わる場合もある。この配置についてプログラムの中でゲルギエフは次のように語っている。

「コントラバス群が左奧にいれば、彼らは第1ヴァイオリンの音を良く聴き取ることができ、両者がバランスよく演奏できることになります。私は、最高音域を担当する第1ヴァイオリンと、力強い最低音を弾くコントラバスとがオーケストラの大きな枠組みを作り、その間に第2ヴァイオリンやフルートやクラリネットや金管など、いろいろな楽器が入って来るという響きの設計を念頭に置いているのです。」


本日のコンサートはピアノ協奏曲の難曲中の難曲であるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を聴けるということもあり、会場はまずまずの入り。ピアノ好きにはたまらないプログラムだろう。筆者も楽しみにしてピアノが良く見える位置に陣取った。開演前は調律師がスタインウェイのピアノを入念に調律している。ピアニストのアレクセイ・ヴォロディンは1977年生まれ。コンクールの優勝歴がある人で、腕前によほどの自信がなければこんな難曲をわざわざ選ばないであろう。

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ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は第1楽章の後半(開始11分、練習番号18の後)に大きなご馳走が用意されている。第1主題の再現をかねた壮大なカデンツァがあるのだが、実は作曲者の手により大小2つのカデンツァが書かれているという。通常のバージョンは〈小さいカデンツァ〉、〈短いカデンツァ〉と呼ばれてスッキリした印象のものである。これに対して〈オッシア〉(Ossia)と呼ばれる大きいカデンツァなるものは、複雑な和音が乱舞するもので腕自慢のためのバージョンと思われる。

スコアをよく見ると、ピアノパートの上に小さく並行してOssiaと書かれている部分がある。Ossiaとはもともと演奏が困難な場合に簡単に編曲しなおしたものを指し、「あるはいまた」「難しければこちらで」という意味らしいが、この曲の場合は逆に難しい方をOssiaと呼ばれている。バイロン・ジャニス、アルヘリッチ、ベルマン、ブロンフマン、そして映画 『シャイン』 (Shine スコット・ヒックス監督 1996年)はOssia、アシュケナージは通常バージョンで演奏しているようである。


ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番ニ短調 作品30
ゲルギエフは相変わらず指揮棒を持たず、指を小刻みにピクピク動かして指揮をする。左からズシリと聞こえてくるバスの響きがロシアの大地を揺るがすように聴き手を圧倒する。特にアダージオ楽章が聴きもので、テンポ・ルバートをかけた弦楽の哀愁のしらべはロシアの情感をたっぷりと湛え、荒々しくもダイナミックな響きからは激情がほとばしるかのようである。民族舞曲の歯切れ良さも聴き応え充分だ。

ヴォロディンの奏でるピアノの音色は明るくタッチは軽量。そのためたっぷりとしたオーケストラに丁々発止と渡り合えるだけの迫力とコクのある味わいには不足する。第1楽章の展開部では白熱するが、如何せんピアノの音がオーケストラに埋没してしまい魅力は半減。チェロ、コントラバスが左手に配置しているのがアダになっているのかも知れない。カデンツァはオッシアを演奏しているように聞こえたが、さすがにテクニックには自信を持っているのか、後半は大きく盛り上げて胸に迫るものが感じられたものの、もうひとまわりのスケール感に加え、表現に深みが欲しいところだ。

フィナーレは野性味溢れるダイナミックな展開でゲルギエフの本領発揮だ。激しく息を発して気をおくり込み、ゲルギエフは容赦なくオーケストラをあおってピアニストと激しくかけ合うが、ここはピアニストの力量不足が否めない。リズムがずれて「ヒヤリ」とする部分も出てしまった。ヴォロディンはコーダでここまでの鬱憤を晴らすかのように機銃掃射のこどく弾きまくる。強引にたたみ掛ける即興的な爆走は聴き手の興奮を大きく誘い、会場の大受けをねらったと思われるが、小じんまりとまとまったテクニシャンという印象はぬぐえず、この曲のロマンテックな楽想に込められた大きなドラマを心ゆくまで堪能するにはいたらなかった。

アンコールは ショパンのマズルカ作品17の4番が演奏されたがラフマニノフのあとにはいささか興醒めであった。

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プロコフィエフ/バレエ音楽「ロメオとジュリエット」第1組曲、第2組曲より抜粋

1.モンタギュー家とキャピュレット家(第2組曲-1,第7曲大公の宣言、第14曲騎士の踊り)
2.少女ジュリエット(第2組曲-2,第10曲)
3.僧ローレンス(第2組曲-3,第28曲ローレンス草庵でのロメオ)
4.メヌエット(第1組曲-4,第11曲客人たちの登場)
5.仮面(第1組曲-5,第12曲)
6.ロメオとジュリエット(第1組曲-6,第19曲バルコニーの情景)
7.タイボルトの死(第1組曲-7,第34曲マーキュシオの死〜第35曲)
8.別れの前のロメオとジュリエット(第2組曲-5,第39曲ロメオとジュリエットの別れ)
9.アンティーユ諸島からの娘たちの踊り(第2組曲-6,第49曲百合の花を手にした娘たちの踊り)
10.ジュリエットの墓の前のロメオ(第2組曲-7,エピローグ)

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さすがにゲルギエフはこのプロコフィエフのバレエ音楽を十八番(おはこ)にしているようで、オーケストラの音色、歯切れの良さ、そして演奏する楽員の目の色がラフマニノフとはうって変わり、その充実した響きはまったく別のオーケストラのようである。ロシアのオーケストラを思わせるダイナミックな響きと緻密なアンサンブルは驚嘆に値する。大公の怒りをあらわす不協和音の強烈な響きが発せられると〈騎士たちの踊り〉がダイナミックに跳梁跋扈する。〈反目の主題〉はホルン、チューバが野性味たっぷりに咆哮する。左右に分かれたヴァイオリン群のシルキーな和音も魅力的だ。

「少女ジュリエット」では左右に分かれたヴァイオリンが切れ味するどく掛け合うさまは見事で、LSOの合奏能力の高さを存分に示してくれる。 「僧フローレンス」のコクのあるたっぷりとしたメロディー、舞踏会がはじまる期待感が大きく高まる「メヌエット」の華やぎのある音楽からは、バレエの情景が目に浮かぶようである。コルネットの独奏の美しさはさすがは金管のLSOの看板の名に恥じぬものだ。

一番の聴きものは「ロメオとジュリエット」。ハープの伴奏にのって愛の情景が語られる場面では、ミュートを付けた弦楽器の精妙な音からロマンティシズムがあふれ出る。愛の場面ではゲルギエフならではの情熱的な音楽が語られるが、ここでは第1、第2ヴァイオリンの腕利きの首席奏者の独奏をたっぷりと堪能させてくれるのだ。特にコンサート・マスターのカルミネ・ラウリ氏が上手い。むかしウィーンフィルのコンサートマスターであった今は亡きゲルハルト・ヘッツェル氏を彷彿とさせる分かりやすいアクションと弓さばきで、音楽にとてもよくノっている。

ヴィオラ奏者もこれに負けてはいない。 「別れの前のロメオとジュリエット」ではヴィオラの難しいソロを見事にこなし、 「アンティーユ諸島からの娘たちの踊り」では翳りのある妖しげな音楽をよろめきたっぷりにかなで、聴き手を存分に酔わせてくれるのである。

圧巻は何と言っても 「タイボルトの死」だ。マーキュシオの快活な主題と決闘の場面が爆発的なエネルギーで演奏される。コル・レーニョによるコントラバスの弓が弦と指板に「バチバチ」と激しく当たって殺気立つ。コントラバス奏者のマシュー・ギブソン氏の恐ろしい形相が音楽に凄みを持たせている。ゲネラル・パウゼで大きく間を入れるとプレストは限界ギリギリまで走らせて実にスリリングな展開だ。激しい戦いのとどめは管弦楽の打撃が延々と15回続く場面。鉈を振り下ろすような強烈な打ち込みは、聴き手を地獄の底に突き落とす。聴衆はこの凄みのある音楽を固唾をのんで聴き入るばかりだ。そして3拍子の葬送行進曲は粘っこいロシアン・ブラスが大きく吠える。突き刺すようなストレートなトランペットの響きが華麗に鳴りわたり、信じられないような管弦楽の大音響がホールいっぱいに轟いたのである。

ラスト音楽の「ジュリエットの墓の前のロメオ」は悲痛にみちた音楽が重々しく描かれる。打楽器の強打、トロンボーン、チューバがワイルドに鳴り響き、劇的な終幕が野性味たっぷりに展開する。そしてバスが力強く打ち込まれると悲しい物語の結末がヴァイオリンではかなく語られる。あっという間の41分。アンコールは予想に違わず「3つのオレンジの恋」から行進曲。今夜のコンサートが賑やかに締めくくられた。

Valery Gergiev ディスコグラフィ (Universal-music)


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テーマ:クラシック - ジャンル:音楽
コメント

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2008/12/03(水) 22:13:28 | URL | poo #-[ 編集]

pooさま、コメントありがとうございました(応援ポチ)。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
2008/12/04(木) 20:26:32 | URL | 野田爺@クラシック #-[ 編集]
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